犬のワクチンのお話。
ワクチンとは、弱体、殺菌した病原体(ウイルス、細菌)を接種することによって、それに対する抵抗力(免疫)を獲得させ、病気の発症を予防したり、重症化を防いだりするものを言います。
犬の混合ワクチンは、感染症から犬を守るための予防接種です。
病気の特徴(症状)
若い犬を中心にみられる急性症と、亜急性の発症、成犬になってからみられる慢性疾患がある。
急性症は、感染後約2週間でみられる。これに先だって感染後1週間で第1回目の発熱がみられるが、その後平熱に戻るので気づかれないこともある。2回目の発熱が感染後2週間位の時点でみられ、この時には鼻水や咳、結膜炎、下痢、嘔吐、脱水、衰弱がみられるようになる。鼻や眼からの分泌物は次第に粘稠な膿様になってくる。この段階で皮膚炎の症状を示すものもあるが、これは免疫が働きだした証拠で、そのような犬は一部回復することもある。
注意が必要なのは神経症状を示すものは死亡することが多い。急性症から回復した後、あるいはあまりはっきりした症状を出さずに急性期を過ぎた犬で、数週間から何カ月も経ってから神経症状を出すものがあり、亜急性の発症と呼ばれる。脳の中にウイルスが潜んでいたためである。6カ月齢より若い犬で、突然原因不明の痙攣などの神経症状がみられた場合には、ジステンパーの亜急性発症が疑われる。この時点で死亡するものも回復するものもあるが、回復しても神経に障害が残ることがある。さらにジステンパーには慢性の発症も知られている。これは4-8歳の中年の犬にみられるもので、徐々に進行して、ときに痙攣や麻痺を示す。また慢性発症の別の形は「老犬脳炎」と呼ばれるもので、6歳以上でみられ、精神的に沈うつ状態になり、眼がみえなくなり、頭を壁に押し当てたり、飼い主を認識できないようになったり、性格が変化したりする。
感染経路・感染状況
主な感染経路は、ジステンパーにかかった犬のくしゃみなどを浴びてしまう飛沫感染と、尿や目ヤニなどに触れてしまう直接感染のふたつ。
犬はよく足裏を舐めるので、散歩中に感染犬の尿を踏んでしまい、それを帰宅して舐めて感染するケースもあります。
ジステンパーウイルスは非常に伝染力が強い。
予防
生まれて最初にワクチンを接種させるのは、母体移行免疫を失う生後50~60日頃が理想的。
ただし、これは母体がワクチン接種などによってウイルスによる免疫を獲得していて、子犬が初乳を飲めた場合に限ります。
それが定かではない場合は、生後30日頃に初回、その約30日後に2回目のワクチンの接種する。
日本では母体移行免疫が子犬の体内に残っていて初回のワクチンの効果が十分でなかったケースを想定して、2回目からさらに約30日後に、3回目のワクチンを打つケースもめずらしくありません。
ワクチン接種後、およそ2~3週間で抗体を獲得します。
治療(感染した場合)
犬ジステンパーウイルスに有効な薬はないため、症状を軽減し自然治癒力を高める対症療法を行うことになる。ほかの犬への感染を避けるため隔離した場所で入院し、脱水や乱れた電解質バランスを整えるために静脈点滴などを行います。 細菌の二次感染を防ぐための薬も投与する。
混合ワクチン
犬ジステンパーウイルスワクチンはコアワクチンに分類され2〜8種の混合ワクチンに含まれる。
費用は¥3000〜¥10000。(種が増えると値段は高くなる。)
*動物病院によって、値段や含まれるワクチンが異なる場合があるのでかかりつけ獣医で確認ください。